鹿肉は「ヘルシーな肉」と紹介されることが多いのですが、牛や豚や鶏と比べて、実際にどれくらい違うのかは意外と知られていません。カロリーが低いのか、たんぱく質が多いのか、それとも両方なのか。気になって調べ始めた方も多いと思います。
この記事では、文部科学省の「日本食品標準成分表」の数値を使って、鹿肉と牛・豚・鶏、そして同じジビエの猪肉を1つの表に並べます。数字の読み方と、ソーセージに加工したときに何が変わるかも、作り手の立場からお話しします。
僕は18歳から格闘技を続けてきて、食べたもので身体が作られることを実感してきました。そんな中、狩猟で出会ったのが鹿肉です。いまは広島でその鹿肉を使ってソーセージを作っています。
鹿肉と牛・豚・鶏を、生100gで並べる

まずは全体を見てみます。数値はすべて「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の、可食部100gあたり・生の値です。同じ牛や豚でも部位によって大きく変わるので、よく比べられる部位を選んでいます。
| 肉(生100gあたり) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 鹿肉(にほんじか 赤肉) | 119kcal | 23.9g | 4.0g |
| 猪肉(脂身つき) | 249kcal | 18.8g | 19.8g |
| 牛もも(皮下脂肪なし) | 169kcal | 20.5g | 9.9g |
| 豚ヒレ(赤肉) | 118kcal | 22.2g | 3.7g |
| 豚ロース(脂身つき) | 248kcal | 19.3g | 19.2g |
| 鶏むね(皮なし) | 105kcal | 23.3g | 1.9g |
| 鶏もも(皮なし) | 113kcal | 19.0g | 5.0g |
| 鶏ささみ | 98kcal | 23.9g | 0.8g |
鹿肉は119kcal。牛もも肉の169kcalよりはっきり低く、豚ヒレや鶏もも肉とほぼ同じくらいです。一方で、鶏むね肉やささみほど低くはありません。
「鹿肉がいちばん低カロリー」というわけではなく、「赤身のグループの中にいる肉」と考えると、実感に近いと思います。
カロリーの差は、ほとんど脂の差

表を見ると、カロリーの高い肉と低い肉を分けているのは、ほとんど脂質の量だとわかります。脂質は1gあたり9kcal、たんぱく質は1gあたり4kcal。同じ重さでも、脂のほうが2倍以上のエネルギーを持っています。
たとえば豚ロース(脂身つき)と猪肉は、どちらも脂質が約19〜20gで、エネルギーも約250kcalです。豚ヒレと鹿肉は脂質が約4gで、どちらも約120kcal。同じ動物かどうかより、脂がどれだけついているかで数字が決まっています。
鹿肉は「脂の少ない赤身」の肉
鹿は山を走り回って暮らす動物で、脂が皮の下や内臓のまわりに集まり、筋肉の中にはあまり入りません。そのため赤身の部分は、脂の少ない肉になります。
そのぶん、火を入れすぎると硬くなりやすいのも鹿肉の特徴です。脂の多い肉のように「多少焼きすぎても美味しい」とはいかないので、焼き加減には少し気をつかいます。
たんぱく質は、鶏ささみと同じ水準

たんぱく質は、鹿肉が100gあたり23.9g。鶏ささみと同じ数字で、鶏むね肉の23.3gをわずかに上回ります。牛もも肉は20.5g、豚ロースは19.3gなので、赤身の肉の中でも多い部類に入ります。
カロリーとたんぱく質の両方で見ると、鹿肉は「鶏むね肉やささみとほぼ同じ位置にいる、鶏以外の赤身肉」です。いつも鶏むね肉を食べている方にとっては、同じ感覚で食べられる別の選択肢になります。
カロリーあたりのたんぱく質量や、たんぱく質20gをとるのに必要な量などは、別の記事でくわしく計算しています。
鉄は、鹿肉がはっきり多い

カロリーやたんぱく質では「鶏と同じくらい」だった鹿肉ですが、はっきり差が出るのが鉄です。
| 肉(生100gあたり) | 鉄 |
|---|---|
| 鹿肉(にほんじか 赤肉) | 3.9mg |
| 猪肉(脂身つき) | 2.5mg |
| 牛もも(皮下脂肪なし) | 1.3mg |
| 豚ヒレ(赤肉) | 0.9mg |
| 鶏もも(皮なし) | 0.6mg |
| 鶏むね(皮なし)・鶏ささみ・豚ロース | 0.3mg |
鹿肉の3.9mgは、牛もも肉の約3倍、鶏むね肉の10倍以上です。鹿肉の赤身が濃い色をしているのは、この鉄を含む成分が多いためです。
同じジビエの猪肉も2.5mgと、家畜の肉より多めです。「ジビエは鉄が多い」とよく言われるのは、この数字を見るとうなずけます。
鹿肉、まずは食べやすい形で試してみませんか?
広島で獲れた鹿や猪の肉に、挽きたてのスパイスと摘みたてのハーブを合わせて、添加物を使わずに作っています。冷凍パックのまま湯煎するだけで食べられます。
ソーセージを見る数字だけでは決まらないこと

ここまで数字で比べてきましたが、成分表の値は「ある部位の、ある時点の平均的な値」です。鹿肉なら部位によって脂の量が違いますし、野生の動物なので、季節や個体によっても肉の状態は変わります。牛や豚でも、同じ「もも」でも品種や育て方で数字は動きます。
それに、肉を選ぶ理由はカロリーやたんぱく質だけではありません。赤身の旨みを味わいたいのか、脂のコクを楽しみたいのか。煮込むのか、焼くのか。食べたい料理によって、合う肉は変わります。
鹿肉は、赤身の旨みがまっすぐ伝わる肉です。鶏むね肉のあっさりした味とも、牛肉の脂の甘さとも違う、しっかりとした肉の味があります。数字で選び始めた方にも、最後は味で選んでもらえたらうれしいです。
ソーセージにすると、数字はどう変わるか

僕たちが作っている鹿肉のソーセージ「鹿ブラックペッパー」は、1パック110gあたり244.2kcal、たんぱく質17.9g、脂質18.6gです。100gに換算すると約222kcal、たんぱく質約16.3g、脂質約16.9gになります。
生の鹿肉と比べると、脂質が増えてカロリーも上がっています。これは、原材料に広島県産の豚脂を合わせているためです。鹿肉は脂が少ないので、赤身だけで腸詰めすると、焼いたときにパサついてしまいます。ジューシーさと、噛んだときの肉汁のために、脂を足しています。
脂質を抑えたい方には、羊肉100%で豚脂を使っていない「羊ティムールペッパー」もあります。1パック110gあたり174kcal、たんぱく質21.2g、脂質12.7gで、僕たちの定番商品の中ではたんぱく質がいちばん多く、脂質がいちばん少ない一本です。
生の肉には生の肉の、ソーセージにはソーセージの良さがあります。鹿肉を料理するのが初めての方には、下ごしらえのいらないソーセージから始めてもらうのも、ひとつの方法だと思います。
鹿肉は、赤身の肉の選択肢をひとつ増やしてくれる

鹿肉は、カロリーは豚ヒレや鶏もも肉と同じくらい、たんぱく質は鶏ささみと同じ水準、そして鉄は牛もも肉の約3倍。数字で見ると、そんな位置にいる肉です。
いつもの鶏むね肉を全部置き換える必要はありません。週に一度、赤身の肉の選択肢に鹿肉を加えてみる。それだけで、食卓の楽しみも、とれる栄養の幅も少し広がると思います。
- 鹿肉のカロリーは牛肉や豚肉と比べて低いですか?
- 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、鹿肉(にほんじか 赤肉 生)は100gあたり119kcalです。牛もも(皮下脂肪なし)の169kcalや豚ロース(脂身つき)の248kcalより低く、豚ヒレ(118kcal)とほぼ同じです。
- 鹿肉と鶏むね肉では、たんぱく質はどちらが多いですか?
- 生100gあたりで、鹿肉は23.9g、鶏むね肉(皮なし)は23.3gです。鹿肉がわずかに多く、鶏ささみ(23.9g)と同じ数値です。
- 鹿肉は鉄分が多いのですか?
- 鹿肉(にほんじか 赤肉 生)の鉄は100gあたり3.9mgで、牛もも(皮下脂肪なし)の1.3mg、鶏むね肉(皮なし)の0.3mgより多く含まれています。
- 鹿肉のソーセージは生の鹿肉よりカロリーが高いですか?
- ドットコミュの鹿ブラックペッパーは、ジューシーに仕上げるため豚脂を合わせているので、生の鹿肉よりカロリーと脂質は高くなります。1パック110gあたり244.2kcal、たんぱく質17.9g、脂質18.6gです。











