ジビエに興味はあるけれど、「野生の肉って大丈夫なの?」「寄生虫がいるって聞いた」と、少し不安に感じている方もいると思います。家族に食べさせるなら、なおさら気になりますよね。
先にお伝えしておくと、ジビエは中心までしっかり火を通せば、安心して食べられる肉です。大切なのは、生や半生で食べないこと。そして、きちんと処理された肉を選ぶことです。
僕は2013年に狩猟を始め、2016年から広島で鹿や猪を扱う仕事をしています。この記事では、ジビエの生食がすすめられない理由と、加熱の目安、家庭で気をつけたいことを、順番にお話しします。
ジビエは「加熱して食べる肉」

牛肉にはレアのステーキやユッケ、馬肉には馬刺しがあるので、「肉によっては生でも食べられる」というイメージがあるかもしれません。ジビエは違います。鹿肉も猪肉も、生や半生では食べず、中心まで加熱して食べる肉です。
これは、ジビエが特別に汚れた肉だからではありません。野生の動物は、人の管理のもとで育つ家畜と違って、どんなものを食べ、どんな環境で暮らしてきたかがわかりません。そのため、家畜ではあまり見られないウイルスや寄生虫を持っていることがあるのです。
ただ、こうしたものの多くは、十分に加熱すれば心配はいりません。ジビエの安全は、「加熱すること」でほとんど守れます。
生で食べてはいけない理由

厚生労働省の指針をもとにした自治体の注意喚起では、野生の鹿や猪が持っていることがあるものとして、次のようなものが挙げられています。
| 原因になるもの | 種類 | 主な症状 |
|---|---|---|
| E型肝炎ウイルス | ウイルス | 発熱、倦怠感、黄疸などの肝炎の症状 |
| 腸管出血性大腸菌 | 細菌 | 腹痛、下痢(血便を伴うこともある) |
| サルコシスティス | 寄生虫 | 食後数時間での下痢、嘔吐、腹痛 |
| 旋毛虫(トリヒナ) | 寄生虫 | 腹痛、下痢、発熱、筋肉の痛み |
2003年には、野生の鹿肉を生で食べた人がE型肝炎を発症した事例が、厚生労働省から報告されています。とくに妊娠中の方は、E型肝炎が重くなりやすいとされているため、野生動物の肉を生で食べることは控えるよう呼びかけられています。
少し怖く感じるかもしれませんが、どれも「生や加熱不十分な肉を食べたとき」のリスクです。しっかり火を通して食べる限り、過度に心配する必要はありません。
加熱の目安は「中心75℃で1分間以上」

厚生労働省は、野生鳥獣の肉を食べるときの加熱の目安として、「中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の加熱」を示しています。
ポイントは「中心部」という言葉です。表面に焼き色がついていても、塊肉の真ん中まで火が通っているとは限りません。ハンバーグやソーセージのように、ひき肉を使った料理も、中までしっかり加熱する必要があります。
色だけで判断しない
鹿肉は赤身の色が濃いので、火が通っていても、断面が少し赤っぽく見えることがあります。反対に、見た目では火が通っていそうでも、中心の温度が足りていないこともあります。塊肉を焼くときは、料理用の温度計で中心の温度を確かめるのがいちばん確実です。
「同等以上の加熱」とは
温度が低くても、時間を長くかければ同じだけの加熱になります。たとえば「中心63℃で30分間」は、食肉の加工でよく使われる条件です。僕たちの店で出している「鹿肉のタルタル」も、鹿肉を芯温63℃で30分、低温調理してからお出ししています。ただ、家庭で低温調理をするのは温度管理が難しいので、まずは中心までしっかり火を通すことをおすすめします。
処理した施設がわかる肉を選ぶ

ジビエの安全は、加熱と同じくらい、獲ってからの処理で決まります。獲ったあとすぐに血を抜き、体を冷やし、衛生的な施設で解体する。この流れがきちんとしている肉は、美味しいだけでなく、安全面でも安心です。
厚生労働省は2014年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を定め、2018年には農林水産省が「国産ジビエ認証制度」を設けました。お店で売られるジビエは、食肉処理業の許可を受けた施設で処理されている必要があります。買うときは、どこで処理された肉なのかがわかるものを選んでください。
僕たちのソーセージに使っている猪や鹿は、広島県東広島で獲れたものです。僕がまだ狩猟をしていた頃からの仲間の猟師さんから仕入れていて、罠猟で捕獲したあと、確実にナイフで血抜きを行い、速やかに衛生的な施設に運び込んで処理しています。
家庭で気をつけたいこと

加熱の目安のほかに、家で料理するときに気をつけたいことを3つ挙げておきます。
生肉に触れた道具を分ける
生の肉を切ったまな板や包丁、生肉をつかんだ箸やトングで、そのままサラダや焼き上がった料理に触れないようにします。焼肉やバーベキューでは、生肉用のトングと食べる用の箸を分けておくと安心です。
冷凍しても、生で食べてよくなるわけではない
「冷凍すれば寄生虫はいなくなる」と聞いたことがあるかもしれません。けれど、寄生虫やウイルスの中には寒さに強いものもあり、冷凍しただけで生食できるようになるとは限りません。冷凍の肉も、解凍したらしっかり加熱してください。
もらった肉は、処理の様子を聞いてみる
知り合いの猟師さんから肉をいただくこともあると思います。そんなときは、いつ、どんなふうに処理した肉なのかを聞いてみてください。そして、どんな肉であっても、中までしっかり火を通して食べるのが基本です。
ソーセージも「加熱して食べる」もの

僕たちのソーセージは、加熱していない生のソーセージを急速冷凍し、真空パックでお届けしています。無添加で作っているので、食べる前には必ず加熱が必要です。
とはいえ、難しいことはありません。冷凍・真空パックのまま、沸騰直前のお湯(目安90〜95℃)に入れて、ジビエのソーセージなら13分ほど湯煎します。ぐつぐつ沸騰させずに、じっくり温めることで、中まで火が通りながら、肉汁も逃げにくくなります。仕上げにフライパンで軽く焼き色をつければ完成です。
湯煎の温度と時間が決まっているので、「中まで火が通ったかな」と迷わずに済むのも、ソーセージの良いところだと思います。
正しく知れば、ジビエはこわくない

ジビエは、生や半生では食べない肉です。そして、中心75℃で1分間以上を目安にしっかり加熱し、処理のわかる肉を選べば、安心して食べられる肉でもあります。
「野生の肉だから不安」という気持ちは、知ることで少しずつほどけていくと思います。正しく火を通して、山の恵みを美味しく味わってください。
- ジビエは生で食べられますか?
- ジビエは生や半生では食べないでください。野生の鹿や猪は、E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌、寄生虫などを持っていることがあるため、中心までしっかり加熱して食べる必要があります。
- ジビエの加熱の目安は何度ですか?
- 厚生労働省は、中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の加熱を目安として示しています。
- 冷凍すればジビエの寄生虫はいなくなりますか?
- 寄生虫やウイルスの中には寒さに強いものもあり、冷凍しただけで生食できるようになるとは限りません。冷凍の肉も、解凍後にしっかり加熱してください。
- 妊娠中にジビエを食べても大丈夫ですか?
- 妊娠中はE型肝炎が重くなりやすいとされているため、野生動物の肉を生や加熱不十分な状態で食べることは控えるよう呼びかけられています。食べるときは中心まで十分に加熱してください。
- ドットコミュのソーセージはそのまま食べられますか?
- 非加熱の生ソーセージを急速冷凍してお届けしているため、食べる前に必ず加熱してください。冷凍・真空パックのまま沸騰直前のお湯で湯煎するのが基本です。











