高たんぱくな肉といえば鶏むね肉。これはもう、揺るぎない定番です。そこに「鹿肉も高たんぱくらしい」という話が入ってくると、どちらが上なのかが気になってきます。
先に答えを書きます。鹿肉のたんぱく質は、鶏むね肉をわずかに上回ります。ただし、その差は100gあたり0.6gです。
0.6gのために肉を変える人はいないと思います。だから、この記事では「超えるかどうか」の先まで書きます。僕は18歳から格闘技を続けていて、いまはブラジリアン柔術をやりながら広島で鹿肉のソーセージを作っています。数字を見るときに、どこを見ると意味があるのかをお話しします。
鹿肉と鶏むね肉のたんぱく質を並べる

文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」から、可食部100gあたり・生の数値を並べます。
| 食材 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| にほんじか 赤肉 | 119kcal | 23.9g | 4.0g |
| あかしか 赤肉 | 102kcal | 22.3g | 1.5g |
| 鶏むね(皮なし) | 105kcal | 23.3g | 1.9g |
| 鶏ささみ | 98kcal | 23.9g | 0.8g |
にほんじかの赤肉が23.9g、鶏むね肉が23.3g。たしかに鹿肉のほうが多いのですが、0.6gの差です。そして鶏ささみは23.9gで、鹿肉とまったく同じです。
脂質を見ると、逆の景色になります。鶏むね肉が1.9g、ささみが0.8gなのに対して、にほんじかは4.0g。あかしかなら1.5gなので鶏むね肉より低いのですが、日本で流通しているのは主ににほんじかです。
つまり、「たんぱく質の量で鶏むね肉に勝てるか」という土俵で見ると、鹿肉はほぼ互角です。勝ってはいますが、選ぶ理由になるほどの差ではありません。
カロリーあたりで見ると、順位が入れ替わる

たんぱく質を意識して食べるとき、実際に気にしているのは「100gあたり何g」ではなく、「必要なたんぱく質をとるときに、カロリーがどれだけついてくるか」のほうだと思います。
100kcalあたりのたんぱく質量を計算してみます。
| 食材 | 100kcalあたりのたんぱく質 | たんぱく質20gに必要な量 | そのときのエネルギー |
|---|---|---|---|
| 鶏ささみ | 24.4g | 約84g | 約82kcal |
| 鶏むね(皮なし) | 22.2g | 約86g | 約90kcal |
| あかしか 赤肉 | 21.9g | 約90g | 約92kcal |
| にほんじか 赤肉 | 20.1g | 約84g | 約100kcal |
この土俵だと、鶏むね肉とささみのほうが上に来ます。同じたんぱく質20gをとるのに、鶏むね肉なら90kcal、鹿肉なら100kcal。10kcalの差です。
ここまでの話をまとめると、こうなります。たんぱく質の効率という一点だけで比べるなら、鶏むね肉とささみは非常に強い。鹿肉はそれに並ぶ位置にいるけれど、追い越してはいません。
自分が作っている肉の話をしていて、こう書くのは少し勇気がいります。それでも、数字は数字です。
鹿肉を、続けやすい形で食べてみませんか?
広島県東広島で獲れた鹿肉に、挽きたてのスパイスと、摘みたてのイタリアンパセリを合わせました。冷凍パックのまま湯煎して、軽く焼くだけです。
鹿肉ソーセージを見るでは、鹿肉を選ぶ理由はどこにあるのか

たんぱく質の量が横並びなら、差がつくのはその先です。
鉄の量が桁違い
にほんじかの赤肉に含まれる鉄は、100gあたり3.9mg。鶏むね肉は0.3mgなので、13倍になります。牛もも肉でも1.3mg、豚ヒレで0.9mgですから、肉の中で見てもかなり多いほうです。
鶏むね肉を中心に食事を組み立てていると、たんぱく質は足りているのに鉄が入ってこない、という形になりがちです。肉を1食分だけ鹿肉に置き換えると、その穴が埋まります。
味の方向が違う
これは数字にならない話ですが、実際には大きいところだと思っています。
鶏むね肉はおいしい食材ですが、毎日続けると飽きます。飽きたものは続きません。続かない食事管理は、栄養の計算が合っていても意味がなくなります。
鹿肉は赤身がしっかりしていて、噛むほど味が出ます。鶏むね肉とは食べたあとの満足感の種類が違うので、間に挟むとリズムが変わります。
僕が初めて自分で獲った鹿を捌いて食べたとき、いちばん驚いたのは栄養価ではなく、単純にうまかったことでした。あの衝撃がなければ、この仕事は始めていません。
ソーセージにすると、数字はどう変わるか

鹿肉そのものの数字と、僕たちが作っているソーセージの数字は違います。ここもそのまま書きます。
「鹿ブラックペッパー」は1パック110gで、たんぱく質17.9g、エネルギー244.2kcal、脂質18.6gです。鹿肉の赤身と比べると、脂質がかなり上がっています。
理由は原材料にあります。鹿肉(広島県産)に、豚脂(広島県産)を合わせているからです。鹿肉は脂が少ない肉なので、そのままソーセージにすると、ぼそぼそとして食べにくいものになります。脂を足すのは、おいしく食べるための工程です。
なので、脂質を切り詰めたい時期には、鹿肉ソーセージは主役になりません。そこは正直なところです。
そのかわり、ソーセージには「食べるまでが短い」という強みがあります。鹿肉のブロックを買って、解凍して、下ごしらえをして、焼いて。この工程が続けられる人は、そもそも食事管理に困っていないと思います。冷凍庫から出して、沸騰直前のお湯に13分。これなら、練習で疲れて帰った日でもできます。
たんぱく質を17.9gとるのに244.2kcal。決して効率のいい数字ではありませんが、「今日は何も作れない」という日に食べられるかどうかは、栄養計算より前の話です。
0.6gの差より、続けられるかどうか

鹿肉のたんぱく質は、鶏むね肉をわずかに上回ります。ただ、勝負がつくのはそこではありませんでした。カロリーあたりの効率では鶏むね肉が上で、鉄の量では鹿肉が大きく上。それぞれ得意なところが違うだけです。
たんぱく質の推奨量は、18歳から64歳で男性が1日65g、女性が50gとされています。この量を毎日、無理なく積み上げていくには、同じ食材を続けるより、いくつか持っておくほうが楽です。
鶏むね肉を中心に置いて、ときどき鹿肉を挟む。それくらいの距離感が、ちょうどいいと思っています。
- 鹿肉のたんぱく質は鶏むね肉より多いですか?
- にほんじかの赤肉は可食部100gあたり23.9g、鶏むね肉(皮なし)は23.3gなので、わずかに多くなります。ただし差は0.6gで、鶏ささみは鹿肉と同じ23.9gです。
- 鹿肉と鶏むね肉では、どちらが減量に向いていますか?
- 同じたんぱく質20gをとるとき、鶏むね肉は約90kcal、にほんじかの赤肉は約100kcalです。カロリーを抑える目的なら鶏むね肉のほうが有利です。鹿肉は鉄が豊富なので、組み合わせて使うのがおすすめです。
- 鹿肉にはどのくらい鉄が含まれていますか?
- にほんじかの赤肉は可食部100gあたり3.9mgです。鶏むね肉(皮なし)の0.3mgと比べると13倍になります。
- 鹿肉ソーセージでも、たんぱく質はとれますか?
- ドットコミュの「鹿ブラックペッパー」は1パック110gあたり、たんぱく質17.9g、エネルギー244.2kcalです。鹿肉に豚脂を合わせているため、鹿肉そのものより脂質は高くなります。
- 1日にどのくらいたんぱく質をとればいいですか?
- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18〜64歳の推奨量が男性65g/日、女性50g/日とされています。運動量によって必要な量は変わります。











