ジビエを仕入れるとき、最初に見るべきは肉質ではありません。安定して届くかどうかです。
鹿や猪のメニューを出したい。お店の看板になる一皿がほしい。そう考えてジビエの仕入れ先を探し始めると、牛や豚とはまったく違う事情にぶつかります。量が読めない、部位がそろわない、個体によって肉が違う。どれも、野生の肉だからこその事情です。
僕は2016年に、猟師仲間から仕入れた鹿や猪を解体・精肉して、飲食店に卸すところからこの仕事を始めました。この記事では、ジビエの流通の仕組みと、品質を見分けるポイント、そして仕入れ方の選択肢を、卸していた側の経験からお話しします。
ジビエの流通は、家畜の肉とは仕組みが違う

牛や豚は、計画的に育てられ、決まった時期に出荷されます。ジビエは違います。猟師が山で捕獲し、食肉処理の許可を受けた施設で解体・処理されて、はじめて食肉として流通します。お店で出すジビエは、こうした施設で処理されたものである必要があります。
そして、供給は山次第です。環境省の速報値では、令和6年度に捕獲された鹿は73万8,700頭、猪は64万3,000頭。一方、食肉処理施設で解体されたのは、鹿が12万7,513頭、猪が4万247頭でした。獲られている数に対して、食肉として流通する数は限られています。
季節や天候、猟の状況によって、入ってくる量も時期も変わります。ジビエの仕入れは、この「読めなさ」を前提に組み立てる必要があります。
品質は「どこで、どう処理したか」で決まる

ジビエの臭みや味の差の多くは、獲ってからの処理で決まります。血抜き、冷却、解体までの時間と手際です。だから仕入れ先を選ぶときは、肉そのものより、処理の中身を聞くのが近道です。
| 確認すること | なぜ大事か | 聞き方の例 |
|---|---|---|
| 処理した施設 | 衛生管理と、責任の所在がわかる | 「どちらの施設で処理された肉ですか」 |
| 捕獲の方法と血抜き | 臭みや肉質に直結する | 「罠ですか、銃ですか。血抜きはどのように」 |
| 届く状態 | 冷凍か冷蔵かで、在庫の持ち方が変わる | 「冷凍で届きますか。部位ごとの真空ですか」 |
| 部位と量の安定性 | メニューに組めるかが決まる | 「ロースは月にどれくらい出せますか」 |
国も、2014年に厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を定め、2018年には農林水産省が「国産ジビエ認証制度」を設けています。処理の中身をはっきり答えてくれる仕入れ先ほど、長く付き合える相手です。
生肉の仕入れが難しいのは、高いからではない

ジビエの仕入れが難しいと言われると、「値段が高いから」と思われがちです。けれど、現場で効いてくるのは値段より、読めないことのほうです。
ロースやヒレのような人気の部位は、1頭から取れる量が限られます。欲しい部位だけが欲しい量そろう、ということはまずありません。季節や個体によって脂ののりも変わるので、同じメニューでも仕上がりが変わります。そして、急に入荷が止まることもあります。
いつ、何が、どれだけ入るかわからない在庫。いわば「読めない在庫」です。これをメニューに組み込むのは、どのお店にとっても簡単ではありません。
実は、これは卸していた僕たちの側も同じでした。創業したばかりの頃、野生の肉は仕入れの見込みが立たず、有効活用したくて仕入れた肉を、売り切れずに廃棄してしまうこともありました。読めない在庫の痛さは、卸す側でも、身にしみて知っています。
加工品で仕入れるという選択肢

読めない在庫を、読める在庫に変える方法のひとつが、加工品で仕入れることです。僕がソーセージを作り始めた理由も、ここにあります。ソーセージなら、どんな部位でも活かせて、ロスが出ません。
お店の側から見ても、加工品にはわかりやすい利点があります。部位の偏りを気にしなくていい。急速冷凍して真空パックで届くので、使う分だけ解凍できる。そして、下処理や味つけが済んでいるので、ピークの時間でも誰が焼いても同じ一皿になります。
僕たちの業務用のフランクフルトサイズには、広島県産の猪肉を合わせています。ジビエのソーセージは、猪プレーン、ハーブソルト、鹿ブラックペッパー、旨辛ハラペーニョといった定番を1パックから卸しています。まず味を見たいお店には、これらに業務用の豚肉ソーセージを加えた「卸売サンプル 猪鹿豚5点セット」も用意しています。
生肉のジビエでしか出せない料理があるのも事実です。ステーキやローストで出したいなら、生肉の仕入れ先を探す価値は十分にあります。そのうえで、定番の一皿は加工品で安定させ、生肉は入荷したときの特別メニューにする。そんな組み合わせ方も、ひとつの考え方です。
ジビエは「語れる一皿」にする

ジビエのメニューは、背景を語れることが大きな武器になります。どこの山で獲れた肉か。どうやって処理されたか。スタッフがひと言添えられるだけで、一皿の価値が変わります。
僕たちのソーセージなら、使っている猪や鹿は広島県東広島で獲れたものです。僕がまだ狩猟をしていた頃からの仲間の猟師さんが、罠猟で捕獲したあと、確実にナイフで血抜きを行い、速やかに衛生的な施設に運び込んで処理しています。この話は、そのままメニューの説明に使っていただいて構いません。
そして、ジビエは中心までしっかり加熱して出すのが基本です。厚生労働省は、中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の加熱を目安として示しています。安全に出せる手順が決まっていることも、スタッフが安心して扱える条件です。
ジビエの仕入れは、読めなさを前提に組み立てる

ジビエは、山次第で量も時期も変わる肉です。仕入れ先を選ぶときは、肉質より先に、処理の中身と、安定して届くかどうかを確かめてください。そのうえで、生肉と加工品をどう組み合わせるかを決めると、無理なくメニューに組み込めます。
読めない在庫に振り回された経験がある僕たちだからこそ、お店の一皿が回る仕組みを一緒に考えられると思っています。ジビエのメニューを考え始めたら、気軽に相談してください。
- 飲食店でジビエを出すには、どこから仕入れればいいですか?
- 食肉処理業の許可を受けた施設で処理されたジビエを仕入れる必要があります。処理した施設や捕獲・血抜きの方法を答えてくれる仕入れ先を選ぶと安心です。
- ジビエの仕入れが難しいと言われるのはなぜですか?
- 野生の肉は、季節や猟の状況によって入荷の量や時期が変わり、人気の部位は1頭から取れる量も限られます。量や部位が安定しにくいことが、メニューに組み込みにくい理由です。
- ジビエのソーセージは1パックから仕入れられますか?
- ドットコミュでは、既存商品なら1パックからお試しいただけます。卸価格での仕入れを検討されている飲食店・小売店向けに、サンプルセットも用意しています。
- 飲食店でジビエを出すときの加熱の目安は?
- 厚生労働省は、中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の加熱を目安として示しています。











