ソーセージは、肉を挽いて塩をして、腸に詰めたもの。やっていることは、どの国でもだいたい同じです。
それなのに、国をまたぐと別の食べものに見えます。真っ白でやわらかいものがあれば、赤くて乾いていて、ナイフで薄く削るようなものもある。同じ発想から出発して、これだけ違う方向へ育っていったというのが、ソーセージの面白いところだと思います。
僕は修行をせずに独学でソーセージを作り始めたので、「こうでなければならない」という型を持たないまま、いろいろな国のものを見てきました。これまでに40種類以上を作ってきて、タイ料理の店と組んでチェンマイ風のものを作ったこともあります。この記事では、代表的な国のソーセージを並べながら、なぜそんな形になったのかを見ていきます。
ドイツ|ソーセージの本場と呼ばれる国

ソーセージといえばドイツ、というイメージは、誇張ではありません。地方ごとに独自のものがあり、種類は数えきれないほどあります。
ブラートヴルスト
「焼くソーセージ」という意味の名前です。生の状態で売られていて、食べる前に焼く。日本でいうと、僕たちが作っているような生ソーセージがこれに近い形です。
ヴァイスヴルスト
ミュンヘンの白いソーセージです。子牛肉とパセリ、レモンの皮などを使っていて、燻製にしません。だから色が白いままです。皮を外して中身だけを食べるのが習わしで、甘いマスタードと一緒にいただきます。日持ちしないため、午前中のうちに食べる習慣があると言われています。
ニュルンベルガー
ニュルンベルクの、指くらいの大きさの小さなソーセージです。マヨラナというハーブが効いていて、何本もまとめて焼いて出てきます。
カリーヴルスト
ベルリンの屋台の味です。焼いたソーセージを切って、カレー粉入りのケチャップをかける。戦後に生まれた比較的新しい食べ方ですが、今ではドイツの国民食のひとつです。
イタリア|生で仕込み、熟成させる

イタリアのソーセージは、ドイツとはずいぶん性格が違います。
サルシッチャ
生の豚肉に塩とフェンネル、ワインなどを合わせた生ソーセージです。そのまま焼いても食べますが、皮から中身を出して、パスタのソースや煮込みの具に使うことも多い。ソーセージを「形のある一品」ではなく「調味された挽き肉」として扱う感覚が、イタリアらしいところです。
モルタデッラ
ボローニャの、太くてなめらかなソーセージです。白い脂の粒が点々と入っていて、ピスタチオが入ることもあります。薄く切ってパンに挟みます。ボロニアソーセージという分類名は、ここから来ています。
サラミ
加熱せず、塩と乾燥と時間で仕上げるソーセージです。水分が抜けて味が凝縮するので、薄く切って少しずつ食べます。
いつもと違う味のソーセージを、探してみませんか?
広島の工房で、挽きたてのスパイスとフレッシュハーブを合わせて作っています。タイ料理の店と組んだものや、イカスミで真っ黒に仕上げたものまで、いろいろ揃えています。
ソーセージのラインナップを見るスペイン|パプリカが決め手

スペインのソーセージを見分けるのは簡単です。だいたい赤いからです。
チョリソー
豚肉に、パプリカパウダー(ピメントン)をたっぷり入れたソーセージです。あの赤い色は唐辛子ではなく、パプリカの色。辛いものだと思われがちですが、本場のチョリソーは辛くないものも多く、燻製のパプリカの香ばしさが主役です。
メキシコのチョリソは、スペインから渡ったあと別の進化をしていて、こちらは生の挽き肉に近く、しっかり辛いものが多いです。同じ名前でも中身がかなり違います。
サルチチョン
パプリカを使わず、黒こしょうで味を決める乾燥ソーセージです。サラミに近い立ち位置です。
モルシージャ
血を使ったソーセージで、米や玉ねぎを混ぜて作ります。日本ではあまり見かけませんが、スペインでは定番です。
スペインやイタリアに乾燥・熟成させるソーセージが多いのは、気候の乾いた地域で保存の方法として育ってきたからだと言われています。ドイツのように寒くて湿度のある土地では、燻製と加熱が中心になる。作り方は、その土地の空気が決めている部分が大きいのだと思います。
代表的なソーセージを一覧で見る

| 国 | 名前 | 特徴 |
|---|---|---|
| ドイツ | ヴァイスヴルスト | 燻製しない白いソーセージ。甘いマスタードと |
| ドイツ | ニュルンベルガー | 指ほどの小ささ。マヨラナが香る |
| イタリア | サルシッチャ | 生ソーセージ。中身を出してパスタにも |
| スペイン | チョリソー | パプリカで赤く。辛くないものも多い |
このほかにも、ポーランドのキェウバサ、イギリスのカンバーランドソーセージ、タイのサイウア(チェンマイソーセージ)など、国の数だけ個性があります。タイのものはレモングラスやこぶみかんの葉が入っていて、ハーブの香りが主役。同じ「肉を挽いて詰めたもの」とは思えないほど、味の方向が違います。
世界の作り方を、広島で混ぜてみる

僕たちは広島で、猪や鹿のジビエを中心にソーセージを作っています。修行をしていないぶん、「ドイツならこう」「イタリアならこう」という決まりを持っていません。そのかわり、面白そうだと思ったものは、とりあえず作ってみます。
渋谷のタイ料理店「CHOMPOO」と組んで、森枝幹さんにレシピを監修してもらったタイカレー風のソーセージがあります。パクチー、ナンプラー、こぶみかんの葉、レモン、ターメリック、チリ。仕込みの日は、大量の具材を刻むところから始まります。「パクチーが苦手だったけど、これで好きになった」と言っていただくことがあって、それがまた嬉しいところです。
猪肉にイカスミとマカを入れて真っ黒に仕上げたものもあります。こちらは発売当時「オールブラックス」という名前でした。どの国のソーセージでもありませんが、どの国の技法も少しずつ入っています。
世界のソーセージを知るほど、作れるものは増えていきます。型がないのは不便なこともありますが、こういうときには自由が効きます。
同じ発想から、これだけ違うものが生まれた

肉を挽いて、塩をして、腸に詰める。それだけの発想から、白いものも、赤いものも、乾いたものも生まれました。その土地の気候と、食卓の形が、味の方向を決めてきたわけです。
どこかの国のソーセージを食べるとき、その一本の向こうに土地の事情があると思うと、味の感じ方が少し変わります。次にお店で見かけたら、名前の由来を調べてみるのも面白いと思います。
- ドイツのソーセージにはどんな種類がありますか?
- 焼いて食べるブラートヴルスト、ミュンヘンの白いヴァイスヴルスト、小ぶりなニュルンベルガー、カレー粉入りのケチャップをかけるカリーヴルストなどが代表的です。地方ごとに独自のものがあり、種類は非常に多いことで知られています。
- チョリソーは辛いソーセージですか?
- スペインのチョリソーの赤い色はパプリカパウダーによるもので、辛くないものも多くあります。メキシコのチョリソはスペインから伝わったあと別に発展したもので、こちらは辛いものが多いです。
- サルシッチャとはどんなソーセージですか?
- イタリアの生ソーセージです。豚肉に塩やフェンネル、ワインなどを合わせて作ります。そのまま焼くほか、皮から中身を出してパスタのソースや煮込みに使われます。
- ボロニアソーセージとモルタデッラは同じものですか?
- ボロニアソーセージという分類名は、イタリア・ボローニャのモルタデッラに由来しています。日本のJAS規格では、牛腸を使ったものまたは太さ36mm以上のものをボロニアソーセージと分類しています。
- ドットコミュにも海外の味のソーセージはありますか?
- 渋谷のタイ料理店「CHOMPOO」と共同で作ったタイカレー風のソーセージなど、各国の食文化から発想した商品を作っています。ラインナップは季節によって変わります。











