ソーセージを噛んだときの、あのぱきっとした感じ。あれを作っているのは中身の肉ではなく、外側の皮です。
この皮を、ケーシングと呼びます。動物の腸を使ったものと、人の手で作ったもの。大きく分けるとこの2つで、どちらを選ぶかによって食感も、作り方も、見た目も変わってきます。
僕たちは肉のカットからミンチ、生地作り、腸詰めまで、全部自分たちの工房でやっています。腸詰めは、工程の最後にあって、いちばん失敗が見えやすいところでもあります。この記事では、ケーシングの種類と違いを、詰めている側の目線からお話しします。
ケーシングとは何か

ケーシングは、ソーセージの生地を詰めるための袋です。形を保つためだけのものに見えますが、役割はそれだけではありません。
ひとつは、加熱したときに水分と脂を中に留めること。ケーシングがあるおかげで、肉汁が逃げずに済みます。もうひとつは、燻製にするときに煙を通すこと。天然腸は煙をよく通すので、香りが中まで入ります。そして3つめが、噛んだときの食感です。
日本のJAS(日本農林規格)では、このケーシングの種類がソーセージの分類にそのまま使われています。羊腸ならウインナー、豚腸ならフランクフルト、牛腸ならボロニア。つまり、皮はソーセージの名前まで決めているわけです。
天然腸|羊腸・豚腸・牛腸

天然腸は、その名のとおり動物の腸をきれいに処理したものです。もともとソーセージは、肉を無駄なく使いきるための知恵から生まれました。腸を袋として使うのも、その延長にあります。
| 種類 | 太さの目安 | 食感 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 羊腸 | 細い | 薄く、ぱきっと切れる | ウインナー、ホットドッグ用 |
| 豚腸 | 中くらい | しっかりした噛み応え | フランクフルト |
| 牛腸 | 太い | 厚みがある | ボロニア、大型のソーセージ |
天然腸のいちばんの魅力は、歯切れです。薄くて弾力があるので、噛んだ瞬間にすっと切れて、中の肉汁が出てきます。人工のものでこの感じを完全に再現するのは、なかなか難しいところです。
そのかわり、扱いは繊細です。天然のものなので、1本1本で太さも厚みも違います。詰めるときに圧が強すぎれば破れますし、弱ければ形が決まりません。僕たちが飲食店向けに作っているホットドッグ用のソーセージは直径24mmの羊腸、フランクフルトサイズは直径30mmの豚腸を使っていますが、同じ規格の腸を使っても、その日その日で少しずつ手応えが違います。
人工ケーシング|コラーゲン・セルロースなど

人工ケーシングは、素材から作られた均一な袋です。いくつか種類があります。
コラーゲンケーシング
牛皮などのコラーゲンを原料に作られたもので、そのまま食べられます。天然腸に近い食感を持ちながら、太さが均一で、長さも自由に決められます。安定して同じものを作れるのが強みです。
セルロースケーシング
植物の繊維から作られたもので、こちらは食べられません。加熱したあとに剥がして出荷します。スーパーで売られている「皮なしウインナー」は、この方法で作られているものが多いです。皮がないぶん、やわらかく、子どもでも食べやすい仕上がりになります。
そのほかのケーシング
大型のソーセージには、繊維質を紙に貼り合わせたファイブラスケーシングや、樹脂のケーシングが使われます。形が崩れにくく、大きなものを作るのに向いています。
人工ケーシングは、大量に、同じ品質で作るために生まれた技術です。天然腸より劣っているということではなく、目指しているものが違います。安定した太さで、狙った食感を毎回出せるというのは、それ自体がひとつの完成度です。
天然腸と人工ケーシングを並べて見る

| 項目 | 天然腸 | 人工ケーシング |
|---|---|---|
| 食べられるか | 食べられる | 種類による(セルロースは剥がす) |
| 太さ | 1本ごとに少しばらつく | 均一 |
| 食感 | 薄く、歯切れがよい | 種類によって作り分けられる |
| 煙の通り | よく通る | 種類による |
どちらが良いという話ではなく、作りたいものに合わせて選ぶものです。僕たちは天然腸を使っていますが、それは食感の理由がいちばん大きいです。噛んだときにぱきっと切れる感じを出したくて、粗挽きの肉と、乳化させた滑らかな生地を混ぜています。皮と中身は、セットで設計するものだと思っています。
皮に傷や色ムラがあるのは、なぜか

天然腸を使っていると、どうしても出てくることがあります。表面に細かい傷のような跡があったり、隣り合う2本で色の濃さが違ったり。
これは、天然の素材だからです。腸は生き物の一部なので、どれも同じにはなりません。僕たちの商品でも、色ムラや羊腸の傷、商品画像との色味の差については、素材の特性としてご理解いただいています(このため返品の対象外とさせていただいています)。
それから、肉の色についても一言。発色剤を使っていないソーセージは、加熱すると全体が茶色や灰色がかった色になります。市販のウインナーのきれいなピンク色は、発色剤のはたらきによるものです。発色剤は、色を保ち、風味を安定させるための技術で、長く使われてきました。僕たちが使っていないのは、危ないからではなく、素材の味をそのまま出したいからです。焼き色のついた地味な見た目になりますが、これがそのままの色だと思っていただけたら嬉しいです。
皮のことを知ると、噛んだ瞬間が面白くなる

ケーシングは、ただの入れ物ではありませんでした。肉汁を留め、煙を通し、噛んだときの食感を決めている。しかもソーセージの分類の名前まで決めています。
天然腸か、人工か。どちらが好みかは、食べ比べてみるとはっきりします。次に一本を口に入れるとき、中身だけでなく、皮のほうにも少し意識を向けてみてください。ソーセージの楽しみが、ひとつ増えると思います。
- ソーセージの皮は食べられますか?
- 天然腸とコラーゲンケーシングは、そのまま食べられます。セルロースケーシングは食べられないため、加熱後に剥がして出荷されます。「皮なしウインナー」はこの方法で作られているものが多いです。
- 天然腸と人工ケーシングでは、何が違いますか?
- 天然腸は薄くて歯切れがよく、燻製の煙をよく通します。人工ケーシングは太さが均一で、安定した品質で作れるのが特長です。目指す食感によって使い分けられています。
- 羊腸・豚腸・牛腸はどう使い分けられていますか?
- 細い羊腸はウインナーやホットドッグ用、中くらいの豚腸はフランクフルト、太い牛腸はボロニアなど大型のソーセージに使われます。JAS規格でも、この腸の種類がソーセージの分類に使われています。
- ソーセージの皮に傷や色ムラがあるのはなぜですか?
- 天然腸を使っているためです。腸は天然の素材なので、1本ごとに厚みや色が少しずつ違います。品質に問題があるわけではありません。
- ドットコミュのソーセージはどのケーシングを使っていますか?
- 天然腸を使っています。飲食店向けの商品では、ホットドッグサイズに直径24mmの羊腸、フランクフルトサイズに直径30mmの豚腸を使用しています。











