獲った分だけ全部仕入れた|ジビエの在庫と廃棄からソーセージへ

黒と白のソーセージ、パン、ミニトマトの一皿
ジビエの商売でいちばん痛いのは、売り切れずに捨てる肉です。獲れた分を意地で全部仕入れ、端材を何度も廃棄したソーセージ屋が、在庫が「時限式の廃棄物」になる理由と、部位ごとに出口を作る3つの方法、仕入れの形をどう変えたかをお話しします。

獲れた分は、全部仕入れていました。

そして、何度も捨てました。

広島でソーセージを作っている中山です。2016年、僕は鹿や猪を丸ごと一頭、仲間の猟師さんから仕入れて、解体して精肉し、飲食店に卸すところから商売を始めました。いまでこそソーセージ屋を名乗っていますが、最初の仕事は肉屋に近いものでした。

この記事は、ジビエの在庫と廃棄の話です。きれいな話ではありません。でも、ジビエを扱う商売を始める方、いま冷凍庫の中身に頭を抱えている方には、たぶんいちばん役に立つ話だと思います。僕が捨てた肉の分だけ、誰かが捨てずに済むなら、あの肉にも少しは意味があったことになります。

ドットコミュ鹿さん 中山浩彰

実は僕、ソーセージは元々そんなに好きじゃなかったんです。それが、肉を捨てない方法を探しているうちに、ソーセージ屋になっていました。

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「今日たくさん獲れたで」が来たら、走る

作業室に集まる男性3人

ジビエの仕入れには、予定がありません。

山で獲れたときに、獲れた分だけ、肉が入ってきます。創業したころの僕は、仲間の猟師さんから「今日たくさん獲れたで」と連絡が来るたびに、東広島の豊栄まで車を走らせていました。朝5時半に家を出て、片道1時間半。一緒に皮を剥いで、枝肉にして、広島市内の工房へ持ち帰る。

これが平均して週に3日です。往復3時間を週3日。つまり毎週9時間、肉を取りに行くためだけに道路の上にいました。昨日仕入れたばかりなのに、今日もまた獲れた、ということも普通にありました。

そして僕は、獲れた分を意地で全部仕入れていました。

せっかく獲ってもらった命ですから。気持ちとしては、いまでも間違っていなかったと思います。商売としては、完全に間違っていました。

  • ジビエは「売れる量」ではなく「獲れた量」で入ってくる
  • 仕入れの手間は、肉の値段とは別に毎週かかっている
  • 断れない気持ちは正しい。ただ、それだけで仕入れると在庫が膨らむ

在庫ではなく「時限式の廃棄物」だった

ミンサーから出るひき肉をボウルへ

肉を卸していくと、すぐにわかることがあります。売れる部位と、売れない部位がある。

卸しやすい部位は出ていきます。それ以外の部位や、解体のときに出る端材は、なかなか売り先が見つかりません。冷凍庫に入れておけば、しばらくは在庫です。でも売り先がないまま時間が過ぎれば、それは在庫ではなくなります。最後は腐らせて、捨てるしかない。悔しい思いを、何度もしました。

名前をつけるなら、出口のない肉は「時限式の廃棄物」です。冷凍庫に入れた瞬間から、捨てる日に向かって時計が動き出している。

しかも、捨てるときのお金は一度では済みません。仕入れ代を払い、取りに行く時間を払い、最後に捨てる手間を払う。三回払って、手元には何も残りません。売れ残りの廃棄は、三重払いです。

  • 売れる部位と売れない部位の差は、卸を始めるとすぐに出る
  • 出口のない肉は、冷凍庫に入れた瞬間から廃棄に向かっている
  • 廃棄は、仕入れ代・時間・処分の三重払い

出口を作る3つの方法

ガード越しのミキサーと肉生地

じゃあ、どうしたか。答えは、出口を増やすことでした。仕入れる量を減らすのではなく、入ってくる肉の全部に行き先を作る。僕たちがたどった順番に書きます。

1. 部位ごとに、売り先を分ける

まずは、部位ごとに誰に売るかを考えることです。料理にしやすい部位は、飲食店へ。全部を同じ売り先に出そうとすると、売れる部位だけが出ていき、残りが冷凍庫に積み上がります。入ってくる前から「この部位はここ」と決めておくのが、在庫を回す第一歩です。

2. 肉ではなく、食べ方ごと売る

生肉を売っていたころ、いちばん聞かれたのは「これ、どうやって食べるの?」でした。家庭で料理する方には、ジビエの調理法はまだなじみがありません。

転機は、イベントの会場で「広島三越のデパ地下の催事に出ないか」と声をかけてもらったことです。そこから家庭向けの惣菜を作り始めました。肉味噌、カレー、リエット、ケバブ。数えきれないくらい作りました。肉を売るのをやめて、食べ方ごと売る。これで、一般のご家庭という出口が開きました。

3. 加工して、端材まで使いきる

最後にたどり着いたのが、ソーセージです。2017年、湯煎して焼くだけで食べられる冷凍の生ソーセージに、活路を見つけました。

ソーセージには、部位の縛りがありません。どんな部位も、端材も、ひき肉にして生地にできます。形も、味付けも、組み合わせも自由にできる。そして何より、ロスを出さない。僕にとってソーセージは、命を活かしきるための武器でした。

出口 使える肉 僕たちの場合
部位ごとの売り先 料理にしやすい部位 創業時は飲食店への卸が中心
食べ方ごと売る 家庭では扱いにくい肉 百貨店の催事をきっかけに惣菜を開発
加工して使いきる 端材を含む、あらゆる部位 2017年から冷凍の生ソーセージ
ドットコミュ鹿さん 中山浩彰

捨てるしかなかった端材が、いまはソーセージの主役なんですよね。同じ肉なのに、出口ひとつでこんなに変わります。

ソーセージ4種類の真空パック

命を使いきる、猪と鹿のソーセージ

広島の山で獲れた猪と鹿を、部位を問わず使いきって作っています。プレーンからスパイシーまで4種類を味わえる、ジビエの入門セットです。

猪鹿4種セットを見る

出口が決まると、仕入れの形も変わる

ひき肉をミキサーの容器へ投入する

ソーセージが中心になってから、仕入れそのものも変わりました。

枝肉を丸ごと買うのではなく、ソーセージに使う端材を中心に仕入れるようになったのです。運び方も、仕入れ方も変わり、毎週9時間の道のりも、少しずつ減っていきました。出口が決まると、入口の形まで決まる。順番が逆だったんだな、と思います。

仕入れ先は、創業前に猟をしていたころからお世話になっている、東広島ジビエセンターさんです。ここは毎回、わなの現場まで行って、かかった個体をその場でナイフで仕留め、回収しています。ハンターさんが持ち込む形の処理場だと、どうしても仕留め方や処理までの時間で品質にばらつきが出る。現場まで行く分めちゃくちゃ大変ですが、その分、肉の質が安定しています。

加工品は、素材がすべてです。在庫の心配が減った分、僕たちはソーセージの中身に集中できるようになりました。ジビエの仕入れ先の選び方は、ジビエを飲食店で仕入れるときの記事でも書いています。

ドットコミュ鹿さん 中山浩彰

健太郎さん、毎回現場まで行ってくれるんです。年始の挨拶に行きますと言ってから、行けたのは11か月後でしたけど。

捨てた肉の分だけ、作り方が決まった

作業台に置いた生ソーセージの山

ジビエの在庫は、仕入れる量ではなく、出口の数で決まります。

獲れた分を全部仕入れるのは、やめてください。気持ちはわかります。僕もそうでした。でも、出口の決まっていない肉は、在庫ではなく時限式の廃棄物です。部位ごとに売り先を決める。食べ方ごと売る。加工して、端材まで使いきる。出口を作ってから仕入れる。この順番を守れば、捨てる肉は確実に減ります。

僕の場合、その答えがソーセージでした。何度も捨てた悔しさがあったから、いまの作り方があります。いまは地に足をつけて、入ってきた命をきちんと使いきり、毎日ソーセージを作っています。ソーセージ作りを独学で始めた話は、未経験で食品製造を始めた記事に書いています。

眼鏡の男性をはさんで笑う女性2人

ジビエの在庫が余ってしまうのはなぜですか?
野生の肉は、売れる量ではなく獲れた量で入ってくるためです。卸を始めると、料理にしやすい部位は売れ、それ以外の部位や端材が残りやすくなります。部位ごとに出口を用意しておかないと、在庫が膨らみます。
ジビエの端材は、どう活かせますか?
ソーセージのような加工品にすれば、部位を問わず使いきれます。ドットコミュでは、端材を活かしてロスを出さないために、2017年から冷凍の生ソーセージを作っています。
ジビエの仕入れ先は、どう選べばいいですか?
仕留め方や処理までの時間で品質が変わるため、獲ってから処理するまでの流れを確かめられる仕入れ先がおすすめです。ドットコミュの仕入れ先は、毎回わなの現場まで行って回収しているため、品質が安定しています。
ドットコミュのソーセージには、どんな肉を使っていますか?
広島県東広島市で獲れた猪と鹿を中心に使っています。商品によっては豚・鶏・羊・牛も使っています。原材料は各商品ページでご確認ください。

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記事を書いた人

中山 浩彰

中山 浩彰ドットコミュ店主

ドットコミュ代表/ソーセージクリエイター。1985年、福井県福井市生まれ。「人にもわんこにも、同じ真剣さで作ったごはんを」を信条に、素材と製法に一切妥協しない無添加の手作りソーセージを日々作り続けている。

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