リン酸塩とは|ソーセージの「プリッと感」と結着剤の話

黒胡椒を添えたソーセージ
ソーセージの原材料表示で見かける「リン酸塩」は、肉の水分を保ち、生地をまとめるために使われる食品添加物です。何のために入っているのか、表示ではどう書かれるのか、使わずに作るときは何で補うのかを、無添加でソーセージを作る立場からお話しします。

ソーセージやハムの袋を裏返すと、原材料のスラッシュの後ろに「リン酸塩(Na)」と書かれていることがあります。名前は見たことがあっても、何のために入っているのかまでは、なかなか知る機会がありませんよね。

リン酸塩は、ソーセージのあの「プリッ」とした食感や、ジューシーさを支える技術のひとつです。この記事では、リン酸塩の役割と表示の読み方、そして僕たちのように使わずに作る場合に何で補っているのかを、ソーセージを作る側の目線でお話しします。

ドットコミュ鹿さん 中山浩彰

リン酸塩って、名前だけだとちょっと難しそうですよね。でも中身は、ソーセージ作りの悩みを解決してくれる、よくできた技術なんです。

リン酸塩は、肉の水分を保って生地をまとめるもの

ステンレスのボウルに入った赤いひき肉の生地

リン酸塩は、リンを含む塩類の総称です。食品にはいくつかの種類が使われていて、ソーセージやハムでは主に、肉の水分を保つ「保水」と、ひき肉同士をくっつける「結着」のために使われます。

ひき肉を練ると、肉のたんぱく質が溶け出して、粘りのある生地になります。この粘りが、加熱したときに肉同士をつなぎとめ、ソーセージのまとまりと弾力を生みます。リン酸塩には、このたんぱく質を溶け出しやすくして、生地が水分を抱え込む力を高める働きがあります。

その結果、加熱しても水分が抜けにくく、しっとりした食感になります。重さも減りにくくなるので、仕上がりの量が安定します。同じ品質のものをたくさん作るうえで、とても頼りになる技術です。

原材料表示では、どう書かれている?

豚肉しそソーセージ2本入りの真空パック

原材料表示では、食品添加物は原材料のあとにスラッシュ(/)で区切って書かれるのが一般的です。リン酸塩は「リン酸塩(Na)」「リン酸塩(Na、K)」のように、ナトリウムやカリウムといった種類を添えた短い名前で書かれることが多くあります。

また、「pH調整剤」のように、同じ目的で使う添加物をまとめた名前(一括名)で表示されることもあります。この場合、リン酸塩が含まれていても、表示に「リン酸塩」という文字が出てこないことがあります。

表示を見るときは、スラッシュの前と後ろを分けて読むのがコツです。前にあるのが肉や塩、香辛料などの原材料、後ろにあるのが食品添加物です。後ろの部分が短いほど、素材に近い作り方をしているとひとまず考えて大丈夫です。

ドットコミュ鹿さん 中山浩彰

スラッシュの後ろって、実は作り手の工夫が詰まっているところなんですよね。読めるようになると、売り場がちょっと面白くなりますよ。

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使わずに作るなら、何で補うのか

厨房で男性が多数の黒いソーセージを成形する様子

猪プレーンや鹿ブラックペッパーなど、僕たちの定番のソーセージは、リン酸塩を使わずに作っています。そのぶん、生地をまとめる力と水分を保つ力を、ほかのところで補っています。

塩で、肉のたんぱく質を引き出す

生地をまとめる主役は、実は塩です。ひき肉に塩を加えて練ると、肉のたんぱく質が溶け出して粘りが出ます。ソーセージ作りで塩が欠かせないのは、味つけのためだけではありません。

温度を上げずに練る

練っているあいだに生地の温度が上がると、脂が溶けて分離し、焼いたときに肉汁が流れ出てしまいます。冷たい状態を保ったまま練ることが、ジューシーさを閉じ込めるいちばんのポイントです。

挽き方と配合を、肉ごとに変える

猪、鹿、豚、鶏、羊では、赤身と脂の割合も、水分の量も違います。粗挽き肉の肉感を残すのか、なめらかに乳化させるのか。挽き方、配合、温度、スパイス、ハーブの調合を、何度も調整しながら決めてきました。

ドットコミュ鹿さん 中山浩彰

正直、温度管理がいちばん気をつかうところです。生地が冷たいうちに勝負する、みたいな感覚なんですよね。

目玉焼きと葉物を添えた焼きソーセージ2本

塩と練りでまとめた、肉の食感を

ドットコミュのソーセージは、肉のカットから腸詰めまで自分たちの工房で作っています。肉そのものの弾力と、噛んだときの肉汁を味わってみてください。

ソーセージを見る

リン酸塩あり・なしの違いを表で見る

フライパンで赤いソーセージを切り分ける様子

リン酸塩を使う作り方と、使わない作り方の違いを表にまとめました。どちらが良い悪いではなく、何を大事にするかの違いです。

項目 リン酸塩を使う リン酸塩を使わない
生地をまとめる力 塩+リン酸塩で安定しやすい 塩と練り方で引き出す
水分の保ちやすさ 加熱しても抜けにくい 温度管理と配合で補う
仕上がりの量 重さが減りにくく安定する 減るぶんを見込んで作る
食感 しっとり、均一な弾力 肉の粒感や、肉ごとの個性が出やすい

リン酸塩を使ったソーセージは、いつ買っても同じ食感で、手頃な値段で手に入ります。使わないソーセージは、肉の種類や挽き方の違いがそのまま食感に出ます。たとえば僕たちの猪プレーンの原材料は、猪肉、豚脂、塩、海藻粉末、砂糖の5つだけです。

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表示の意味がわかると、選ぶのが楽しくなります

フライパンのハンバーグにソースを注ぐ

リン酸塩は、ソーセージの水分を保ち、生地をまとめるための技術です。使用基準の範囲で使われていて、手頃な値段で安定した品質のソーセージが買えるのは、この技術のおかげでもあります。

そのうえで、肉そのものの食感を味わってみたい日には、リン酸塩を使わずに作ったソーセージも選択肢に入れてみてください。表示の意味がわかると、売り場で袋を裏返すのが少し楽しくなると思います。

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居酒屋で料理を囲んで話す男性たち

ソーセージのリン酸塩は何のために入っているのですか?
肉の水分を保つ「保水」と、ひき肉同士をまとめる「結着」のために使われます。加熱しても水分が抜けにくく、しっとりした食感になります。
原材料表示で「リン酸塩」はどう書かれていますか?
原材料のあとのスラッシュ(/)以降に、「リン酸塩(Na)」のような短い名前で書かれることが多いです。「pH調整剤」などの一括名で表示される場合もあります。
リン酸塩を使わなくてもソーセージは作れますか?
作れます。塩でたんぱく質を引き出し、生地の温度を上げずに練ることで、肉をまとめることができます。肉の種類ごとに挽き方や配合を調整します。
ドットコミュのソーセージにリン酸塩は入っていますか?
猪プレーンや鹿ブラックペッパーなどの定番商品は、原材料にリン酸塩を使っていません。原材料は商品ごとにパッケージと商品ページに記載していますので、あわせてご確認ください。

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記事を書いた人

中山 浩彰

中山 浩彰ドットコミュ店主

ドットコミュ代表/ソーセージクリエイター。1985年、福井県福井市生まれ。「人にもわんこにも、同じ真剣さで作ったごはんを」を信条に、素材と製法に一切妥協しない無添加の手作りソーセージを日々作り続けている。

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