ジビエが臭いと言われる理由|鹿肉・猪肉の臭みはどこで決まる?

ジビエが臭いと言われる理由|鹿肉・猪肉の臭みはどこで決まる?
ジビエが臭いと言われるのはなぜか。鹿肉や猪肉の臭みは、台所に届くより前の段階で決まっていることがほとんどです。臭くなってしまう主な原因と、美味しいジビエを選ぶためのポイント、家庭でできる臭み対策をまとめました。以前食べて苦手意識がある方にも。

「ジビエって、臭いんじゃないの?」鹿肉や猪肉の話をすると、こう聞かれることがあります。以前食べたときに独特のにおいが気になって、それ以来少し苦手意識がある、という方もいるかもしれません。

実際のところ、ジビエの味わいには大きな幅があります。においが気になる肉がある一方で、驚くほどクセがなく、すっきりとした旨みを感じられる肉もあります。

この違いはどこから生まれるのか。広島で猟師仲間から仕入れた鹿や猪の解体・精肉から始めて、今はジビエのソーセージを作っている僕の立場から、ジビエの臭みが生まれる理由と、美味しいジビエに出会うためのポイントをお話しします。

ジビエの臭みは、台所に届く前に決まることが多い

臭みのある肉というと、料理の段階で牛乳に漬けたり、香味野菜と一緒に煮込んだりして「消すもの」というイメージがあるかもしれません。もちろん、調理の工夫でにおいをやわらげることはできます。

ただ、ジビエの場合は、臭みの多くが調理よりもっと前の段階、つまり獲ってから肉になるまでの処理で左右されます。

牛や豚は、決められた施設で、決められた手順で処理されてから流通します。一方でジビエは、山で獲れた野生の動物です。いつ、どこで、どのように獲られ、どのくらいの時間で処理されたか。その一つひとつが、肉の状態にそのまま表れます。

僕が狩猟を始めたのは2013年のことです。初めて自分で獲った鹿を捌いて食べたとき、思わず「めちゃくちゃうまい…!」と声が出ました。ジビエは本来、きちんと扱えばとても美味しい肉です。臭みがあるかどうかは、肉の種類そのものよりも、扱われ方によるところが大きいと僕は考えています。

ジビエが臭くなる主な原因

ジビエの臭みにつながる原因は、大きく分けて次の4つです。

血抜きが十分でない

血液は肉よりも傷みやすく、肉の中に残るとにおいの原因になります。獲ったあとに素早く、しっかりと血を抜けているかどうかは、肉の味を大きく左右するポイントです。

体の温度がなかなか下がらない

動物の体は、仕留めたあともしばらく温かいままです。体温が残った状態が長く続くと、肉の中で細菌が増えやすくなり、品質が落ちてにおいが出やすくなります。獲ったあと、どれだけ早く肉を冷やせるかが大切です。

内臓の内容物が肉に触れる

胃や腸の中身が肉に付いてしまうと、そのにおいが肉に移ります。内臓を傷つけないように取り出すことや、処理のときに肉を清潔に保つことも、臭みを防ぐうえで欠かせません。

季節や個体による違い

野生の動物は、一頭ごとに育ってきた環境が違います。何を食べていたか、どの季節に獲れたか、オスかメスか、年齢はどのくらいか。たとえば繁殖期のオスは、独特の強いにおいを持つことがあります。こうした個体差は、処理の良し悪しとは別に、肉の風味に影響します。

獣肉が臭いというのは、肉の種類の問題ではなく、処理の問題です。動物にはすべて体温があります。仕留めたあとにうまく血が抜けず、冷却もおろそかで、ゆっくりと温度が下がっていくと、美味しいお肉にはなりません。大事なのは、血抜きと冷却。素早く衛生的に血を抜くこと、速やかに冷やすことで、雑菌の繁殖を防ぐことができます。

僕たちのソーセージに使っている猪や鹿は、広島県東広島で獲れたものです。僕がまだ狩猟をしていた頃からの、信頼できる仲間の猟師さんから仕入れています。罠猟で捕獲したあと、確実にナイフで血抜きを行い、速やかに衛生的な施設に運び込んで処理しています。

ここまでの4つに、流通や家庭での「保存・解凍」を加えて表にまとめると、次のようになります。

臭みの原因 影響する段階 臭みにつながる理由 防ぐためのポイント
血抜き 獲った直後 傷みやすい血液が肉に残る 素早く、しっかり血を抜く
冷却 獲った直後〜処理まで 体温が残り、細菌が増えやすくなる できるだけ早く肉を冷やす
内臓の扱い 解体のとき 内容物のにおいが肉に移る 内臓を傷つけずに取り出し、清潔に処理する
個体差 獲る前から 季節・性別・食べていたものによって風味が変わる 獲れた時期や個体に合わせて使い方を選ぶ
保存・解凍 流通〜家庭 温度の変化で肉が傷んだり、ドリップが出たりする 低温で保存し、冷蔵庫でゆっくり解凍する

表を見るとわかるように、臭みの原因の多くは、肉が店頭や食卓に届く前の段階にあります。

美味しいジビエを選ぶためのポイント

臭みの多くが処理の段階で決まるということは、買う側にとっては「どんな肉を選ぶか」が大切だということでもあります。

処理した施設や作り手がわかるか

厚生労働省は2014年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を定め、ジビエの捕獲から処理、流通までの衛生管理の考え方を示しています。また、農林水産省の「国産ジビエ認証制度」では、この指針に沿って適切に処理を行う施設が認証を受けています。

商品説明に、どこの施設で処理されたか、どの地域で獲れたかが書かれている肉は、それだけ扱いに責任を持っている証とも言えます。

保存状態がよいか

ジビエは冷凍で流通していることが多い肉です。きちんと低温で保存されていれば、冷凍であることは品質を保つうえでの強みになります。届いた肉にパックの破れや霜が多く付いていないかも、見ておきたいポイントです。

加工品から試してみる

ジビエに少し苦手意識がある方は、ソーセージなどの加工品から試してみるのもひとつの方法です。スパイスやハーブと合わせて味が整えられているので、ジビエの旨みを気軽に楽しめます。

「ジビエを食べたことがない」「まずどれを食べるのがいいですか?」と聞かれたとき、僕たちが入門編としておすすめしているのが「猪プレーン」です。原材料は「猪肉、豚脂、塩、海藻粉末、砂糖」。味つけはアンデス岩塩と砂糖だけなので、猪肉そのものの味を確かめてもらえます。

ドットコミュのジビエソーセージ

ジビエの美味しさ、ソーセージから試してみませんか?

広島産のジビエ肉に、挽きたてのスパイスと摘みたてのハーブを合わせて作っています。冷凍パックのまま湯煎するだけで、手軽に楽しめます。

ジビエソーセージを見る

家庭でできる臭み対策

良い肉を選んだうえで、家庭での扱い方を少し工夫すると、ジビエをさらに美味しく楽しめます。

冷蔵庫でゆっくり解凍する

冷凍のジビエは、常温や電子レンジで急いで解凍するより、冷蔵庫でゆっくり解凍するのがおすすめです。急な温度変化を避けることで、ドリップ(肉から出る水分)が出にくくなります。

ドリップはキッチンペーパーで拭き取る

解凍したときに出たドリップには、においの元になる成分が含まれていることがあります。調理の前に、キッチンペーパーで表面の水分を軽く拭き取っておきましょう。

香りのよい食材を合わせる

にんにくや生姜、ローズマリーやタイムなどのハーブ、黒胡椒などのスパイスは、ジビエと相性のよい食材です。においを隠すというより、肉の力強い味わいを引き立ててくれます。

中心部までしっかり加熱する

ジビエは、中心部までしっかり火を通して食べるのが基本です。厚生労働省は、中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の加熱を目安として示しています。鹿肉は脂が少ないため、強火で一気に焼くより、火加減を調整しながらじっくり火を通すと、やわらかく仕上がります。

僕がジビエをソーセージにしている理由

初めて獲った鹿の美味しさに驚いたのと同時に、僕の中に引っかかったことがありました。「この肉が、駆除されて捨てられているなんて」。この美味しさを伝えたい、これを仕事にしたい。そう思って、2016年にドットコミュを立ち上げました。

最初は、猟師仲間から仕入れた鹿や猪を解体・精肉して、飲食店に届ける仕事から始めました。ただ、野生の肉はいつどれだけ入ってくるか見込みが立たず、なかなか思うように販路は広がりませんでした。有効活用したくて仕入れたはずの肉を、売り切ることができずに廃棄する日々。そんな状況が悔しくて仕方ありませんでした。生肉を販売していると、「料理の方法がわからない」「どうやって食べるの?」と言われることもよくありました。

そこで、創業からおよそ10ヶ月後に独学で始めたのがソーセージ作りです。ソーセージなら、部位の縛りがありません。味つけも、形も、組み合わせも自由に考えられて、何より肉のロスを出さずに、一頭の命をまるごと美味しく届けられます。

挽き方や配合、温度、スパイスやハーブの調合。何度も作っては調整してを繰り返しながら、今の味にたどり着きました。たとえば定番の「鹿ブラックペッパー」は、インドから取り寄せたホールのスパイスを使うたびに挽き、塩と香辛料を一晩肉になじませ、広島近郊で採れたイタリアンパセリを腸詰めの直前に刻んで混ぜています。僕たちがスパイスやハーブを使うのは、肉のにおいを隠すためではありません。ジビエならではの力強い旨みを、より美味しく味わっていただくためです。

「ジビエは臭い」と感じた方へ

ジビエの臭みは、肉の種類そのものより、獲ってから食卓に届くまでの扱い方で大きく変わります。血抜き、冷却、ていねいな解体。そうした一つひとつの積み重ねが、ジビエの味を決めています。

以前食べたジビエが苦手だった方も、それはジビエのすべてではないかもしれません。作り手や処理の様子がわかる肉を選んで、もう一度味わってみてください。僕が初めて鹿を食べたときのような驚きに、出会っていただけたら嬉しいです。

ジビエはすべて臭いのですか?
すべてのジビエが臭いわけではありません。臭みの多くは、血抜きや冷却、解体など、獲ってから肉になるまでの処理によって左右されます。適切に処理された肉は、クセが少なく旨みを感じやすい味わいです。
ジビエの臭みは牛乳に漬けると取れますか?
牛乳や酒に漬ける方法は、家庭でよく使われる臭み対策のひとつで、においをやわらげる助けになります。ただし、処理の段階で生まれた強いにおいを完全に消すことは難しいため、まずは処理のしっかりした肉を選ぶことが大切です。
ジビエの冷凍肉はどうやって解凍すればいいですか?
冷蔵庫に移して、時間をかけてゆっくり解凍するのがおすすめです。解凍後に出たドリップは、調理の前にキッチンペーパーで拭き取ってください。
ジビエは生や半生で食べられますか?
ジビエは生や半生では食べず、中心部までしっかり加熱してください。厚生労働省は、中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の加熱を目安として示しています。
ジビエが苦手でも食べやすいものはありますか?
ソーセージなどの加工品は、スパイスやハーブと合わせて味が整えられているため、ジビエを初めて食べる方や苦手意識のある方にも試しやすい食べ方です。

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記事を書いた人

中山 浩彰

中山 浩彰ドットコミュ店主

ドットコミュ代表/ソーセージクリエイター。1985年、福井県福井市生まれ。「人にもわんこにも、同じ真剣さで作ったごはんを」を信条に、素材と製法に一切妥協しない無添加の手作りソーセージを日々作り続けている。

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