スーパーの肉売り場やパッケージの裏で見かける「国産」の文字。なんとなく安心できる言葉ですが、それが「日本で生まれた」ことなのか、「日本で育った」ことなのか、はっきり説明できる方は意外と少ないと思います。
実は、肉の「国産」は、生まれた場所ではなく、いちばん長く育った場所を指しています。そして、加工食品の産地表示には、また別のルールがあります。
僕は広島でソーセージを作っていて、自分たちのラベルにも産地を書いています。この記事では、産地表示のルールと、「国産」という言葉が何を指しているのかを、実際の表示を例にお話しします。
「国産」は、どこで育ったかの表示

肉や野菜、魚などの生鮮食品には、原産地を表示することが義務づけられています。国内で生産されたものは「国産」「国内産」、または都道府県名などで書き、輸入されたものは原産国名で書きます。
このとき「国産」とされるのは、日本で生産されたものです。肉の場合、その「生産」の場所をどう決めるかに、ひとつ大事なルールがあります。
肉の「国産」は、いちばん長く育った場所

牛や豚、鶏などの肉は、育てられた期間がいちばん長い場所が原産地になります。たとえば、外国で生まれた牛でも、日本で育てられた期間のほうが長ければ「国産」と表示できます。反対に、日本で生まれても、外国で長く育てば、その国が原産地です。
よく混同されるのが、「国産牛」と「和牛」です。
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| 国産牛 | 品種を問わず、日本で育てられた期間がいちばん長い牛 |
| 和牛 | 黒毛和種など特定の品種(とその交雑種)で、日本で生まれ育った牛 |
| 都道府県名(例:広島県産) | 国産のうち、主に育った都道府県がわかるもの |
| 原産国名(例:オーストラリア産) | 輸入された肉。その国で長く育ったもの |
「和牛」は品種と生まれ育ちの話、「国産牛」は育った場所の話です。どちらが上ということではなく、表している中身が違います。
加工食品の産地表示は「いちばん多い原材料」

ソーセージやハムのような加工食品では、2017年に食品表示基準が改正され、輸入品を除くすべての加工食品で、使った量がいちばん多い原材料の産地を表示することになりました。2022年4月からは、この表示が完全に義務になっています。
書き方は、国別に使った量の多い順に書くのが原則です。ただ、仕入れ先の国が季節によって変わる場合などには、次のような書き方も認められています。
又は表示
「豚肉(アメリカ又はカナダ)」のように、使う可能性のある国を「又は」でつないで書く方法です。
大括り表示
3か国以上の外国から仕入れている場合などに、「豚肉(輸入)」のようにまとめて書く方法です。
製造地表示
いちばん多い原材料が、すでに加工されたもの(中間加工原材料)の場合は、「〇〇製造」のように、それを作った場所を書きます。
ソーセージの表示で見てみる

僕たちのソーセージの原材料表示で、産地の書き方を見てみます。
鹿肉のソーセージ「鹿ブラックペッパー」は、「鹿肉(広島県産)、豚脂(広島県産)…」。主な原材料の鹿肉だけでなく、合わせている豚脂の産地も書いています。一方、「羊ティムールペッパー」は、羊肉(オーストラリア産)100%で作っています。輸入の肉なので、原産国名で書いています。
飲食店向けのフランクフルトは、「豚肉(国産)、鶏肉(国産)、猪肉(広島県産)…」。同じ「国産」でも、「国産」とだけ書く場合と、都道府県名まで書く場合があります。都道府県名が書いてあれば、それだけ産地が細かくわかるということです。
ちなみに、鹿や猪のような野生の動物には「育てられた場所」がありません。僕たちが「広島県産」と書いている猪や鹿は、広島県東広島で獲れたものです。僕がまだ狩猟をしていた頃からの仲間の猟師さんから仕入れ、罠猟で捕獲したあと、速やかに衛生的な施設で処理しています。
産地表示だけでは、わからないこと

産地表示はとても役に立つ情報ですが、それだけでわかることには限りがあります。
加工食品で義務になっているのは、いちばん多い原材料の産地だけです。2番目以降の原材料の産地は、書かれていないこともあります。また、「国産」かどうかは育った場所の話で、どんなふうに育てられたか、どう処理されたかまでは、表示からはわかりません。
もっと知りたいときは、商品ページやメーカーの説明を見てみてください。原材料の産地や、どこから仕入れているかを書いている作り手もいます。産地は、「どこ」だけでなく「誰から」まで見えると、ぐっと安心につながると思います。
「国産」の中身を知ると、表示が読みやすくなる

肉の「国産」は、いちばん長く育った場所が日本であることを指しています。「和牛」は品種と生まれ育ちの話。加工食品では、いちばん多い原材料の産地が表示されます。
「国産だから安心」と一言で終わらせずに、その中身が少しわかるだけで、売り場の表示はずっと読みやすくなります。次に買い物をするとき、産地の書き方にも少し目を向けてみてください。
- 肉の「国産」とはどういう意味ですか?
- 育てられた期間がいちばん長い場所が日本であることを指します。外国で生まれた家畜でも、日本で育った期間のほうが長ければ「国産」と表示できます。
- 「国産牛」と「和牛」は何が違いますか?
- 「和牛」は黒毛和種など特定の品種で日本で生まれ育った牛、「国産牛」は品種を問わず日本で育った期間がいちばん長い牛です。
- 加工食品の原料原産地表示は、すべての原材料に書かれていますか?
- 義務づけられているのは、使った量がいちばん多い原材料の産地です。2番目以降の原材料の産地は書かれていない場合もあります。
- 「又は表示」「大括り表示」とは何ですか?
- 仕入れ先の国が変わる場合などに認められている書き方で、「又は表示」は可能性のある国を「又は」でつなぎ、「大括り表示」は「輸入」などとまとめて書く方法です。











